2021年4月1日木曜日

寺報4月(表) ―坊守エッセイ―

今年の桜は三月末ですでに満開。
入学式まで待ってくれそうにありませんね。

桜は日本人にとって特別な花だと言われています。
一輪一輪の可憐さ、満開の時の圧倒的な美しさ、散り際のはかなさが、日本人の持つ「もののあわれ」の心にしっくりとくるのでしょう。
昔から桜を歌った和歌や物語が多くあることも頷けます。

古今和歌集に「深草の野辺の桜よ心あらば今年ばかりは墨染に咲け」という歌があります。
上野岑雄( かむつけのみねお) という人が友人を悼んで読んだ歌で、源氏物語で引き歌として使われています。

咲き誇る桜にさえも「私の気持ちを分かってくれるならば喪の色に咲いておくれ」と懇願してしまうほどの悲しみを歌っています。
古来から桜は私達の悲しみにさえも寄り添ってくれる存在だったのですね。

今年のお花見はソーシャルディスタンスを保ちつつ、静かにそっと楽しむだけですが、こんな時にも私達を慰めてくれる桜。
桜を愛でる心を頂ける幸せをしみじみ感じる春です。
【by坊守】

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