敬って阿弥陀如来の御前に白して言さく。それ当月十五日、釈迎牟尼世尊 沙羅双樹の下、八十年の生涯を閉じ 涅槃に入り給う。あらためて我等「自灯明、法灯明」、すなわち「自らをたよりとし、み教えをたよりとせよ」とのご遺訓を仰ぎつつ、念仏もろともに謹みて聖教を読誦し奉る。
およそ二千五百年前の二月十五日、お釈迦さまはインド北部のクシナガラという地で二本の対になった沙羅の木の間に横たわり、八十歳の生涯を閉じて涅槃に入られました。その時、お釈迦さまの死を悲しんだ沙羅の木は淡い黄色い花を落として枯れ、再び真っ白な花を咲かせて、その花びらがお釈迦さまの上に舞散り覆いつくしたといわれています。
「涅槃」とはサンスクリット語で「ニルヴァーナ」といい、「吹き消す」という意味です。煩悩の火が吹き消された状態、すべての束縛から解放されること、すなわち覚りの境地を意味します。そこから、特に「お釈迦さまの死(入滅)」を指す言葉になりました。
そして、涅槃に入ろうとするお釈迦さまが傍らで涙する弟子たちに残した遺言が「自灯明、法灯明」です。迷いの人生にあっても、闇を明るく照らす灯火のように自らを拠り所とし、他を拠り所としてはいけません。私の説いた教え、法を拠り所として、他を拠り所としてはいけません。それは、他人の言葉に従うのではなく自分で考える人間になりなさいということであり、それでありながら、自我を中心に置かず人としてあるべき真実を中心に置いて生きていきなさいということなのです。
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