2023年9月15日金曜日

寺報9月(裏)―住職雑感―

今年の異常な暑さのせいか境内の竜の髭が一部枯れてしまいました。
暑さ寒さに強い草なのに・・・と驚いています。

お参りの際にこの話をすると、うちもうちもと、どうやら自分のところだけではないようです。
温暖化でこのままでは日本の植生が変わってしまいそうで心配です。

そんな心配をよそに、日本がもっと熱くなっても大丈夫そうなのは竹。
竹はインドへ仏跡参拝に行ったときにも見かけました。

ただ、日本の竹と違ってインドの竹は株立ちで、根元から複数の稈(かん)が生えます。
その稈が蘇鉄の葉のように広がって伸びるので、その下に大きな木陰ができ、古来そこが人々の憩いの場所になってきました。

『観無量寿経』に登場した頻婆娑羅(びんばしゃら)王が、教えを説きながら旅をされるお釈迦さまに定期的に留まっていただくために選ばれた場所も、お城から少し離れた静かで心地よい大きな竹林でした。
その場所は四大精舎の一つ、竹林精舎と呼ばれることになります。

王は息子の阿闍世(あじゃせ)に牢に幽閉され殺されるという悲しい最期を遂げましたが、仏法を頼りに最後まで毅然と生き抜かれたそうです。

2023年9月5日火曜日

寺報9月(表)―坊守エッセイ―

お盆行事がひと段落した8月末日、娘と伊勢旅行に行ってきました。
大谷専修学院の修学旅行以来なので実に30年振りのお伊勢参りです。

江戸時代には「一生に一度は伊勢参りに行くべき」と大流行したそうです。
とくに60年に一度の爆発的な流行は「おかげ参り」と言われて数百万単位の人が神宮に押し寄せたそうで、伊勢参宮絵図にはその賑やかな様子が描かれています。

その絵図の中に必ず描かれているのが主人の代わりに伊勢参りをする犬たちの姿です。
この首にしめ縄と路銀の入った巾着をぶら下げた「おかげ犬」達は、伊勢参りの人々や街道沿いの人々から大切にもてなされ手助けをしてもらったそうです。
人々は飼い主の願いを健気に運ぶ無垢な存在を世話をすることで、自らの願いもまたおかげ犬に託したのかもしれません。

福島県須賀川の十念寺には、シロという犬の像が残っています。
シロは病気で伊勢参りできない主人に代わって二か月かけて伊勢参りをして、神宮のお札をもらって帰ってきたといわれています。
我が家のすずちゃんはぼんやりしてますから、そんな大仕事やりとげるなんて絶対無理でしょうね。
【by坊守】