2022年3月25日金曜日

正信偈のお話 十六⑰

善導独明仏正意 矜哀定散与逆悪
光明名号顕因縁

[二河白道⑦]
では東岸の盗賊や野獣といった群賊悪獣は何を意味するのでしょうか。

それらは、衆生の六根・六識・六塵・五陰・四大を表すのだそうです。
六根とは眼・耳・鼻・舌・身の五つの感覚と意識のこと。
六識はその六根を通して得られる認識のこと。六塵は六識の対象となる色・声・香・味・触・法(物事、あるいは理)のことです。
残る二つは、仏教では人間とそのあり方を構成する要素を五陰、色(物質)・受(感情)・想(表象作用)・行(意志)・識(知覚)の五つ。
物質を構成する要素を四大、地・水・火・風としました。

2022年3月10日木曜日

寺報3月(裏)―住職雑感―

先月、九州で暮らす母が傘寿を迎えました。
正月に妹に電話をしてどうするか尋ねると、その時点ではまだ何も考えていなかったようですが、兄妹で何ができそうかそれとなく母に探りを入れてくれることになりました。
結局、コロナの感染拡大真っ盛りで集まることもかなわないので大きな事は諦めて、妹は第6波が落ち着いたら一緒に食事に行くことに、うちは毎年贈っている花を今回は奮発して胡蝶蘭にしました。

さて、傘寿の由来は文字の見た目にあるそうで、「八十」と縦書きすると、「傘」の略字に似て見えるからなんだとか。

ちなみに仏教のシンボルには仏舎利塔、法輪、蓮の花がよく知られていますが、傘もその一つなんですよ。
傘は人々を太陽の熱や雨から守ってくれます。つまり仏教における傘は苦悩や有害な力からの保護を意味しているんです。

独り立ちするまでは親の傘の下で育てていただきましたが、実はその後も見えない傘で見守られています。
そのことに深く感謝をするのが傘寿なのかもしれません。

2022年3月2日水曜日

水平社博物館リニューアルオープン

 明日3月3日は水平社宣言の100周年です。
「水平社宣言」は、被差別部落出身の方々が自主的な運動で部落差別からの解放を目指すことを宣言したもので、被差別マイノリティーが発信した「世界初の人権宣言」といわれています。

水平社博物館もこれを記念してリニューアルオープンします。

私は県の人権のお仕事をさせていただいている関係でリニューアルオープン前に観覧できる招待券をいただけましたので、友人のお坊さんを誘って行ってきました。

以前の展示は、当然といえば当然ですが部落差別問題啓発のための内容でしたが、この度のリニューアルでは部落差別問題を中心に置きつつも、広く人権について学んでいただくための展示となっていました。
青少年にも親しみやすいように、みんながよく知る漫画や絵本も資料に盛り込まれていました。

人権問題は決して他人事でも日常生活と無関係なことでもありません。
イジメもセクハラもパワハラも性差別も犯罪も暴力も虐待も戦争もみんな人権問題です。
私は特に問題を感じないと思われている方もおいででしょうが、それは、人権の歴史の積み重ねによって社会的、法的に無自覚で暮らせるようにしてもらえているお陰なんですよ。

その歴史を知るために、そして今現在の問題を知るために、誰もが安心して暮らせる社会のために、リニューアルした水平社博物館を是非訪れてみてください。

2022年3月1日火曜日

寺報3月(表)―坊守エッセイ―

寒さの中にも少しずつ春が近づいているのが感じられますね。

思えばマスク生活も丸二年が経とうとしています。
始めの頃、マスクをしてのお勤めは息が苦しくて酸欠で頭がクラクラするわ、声はモゴモゴするわ、鼻水は垂れるわで大変でした。
お聞き苦しい事もあったのではないかと思います。

学生時代にある先生が、「あなた方もご門徒様宅のお内仏にお参りすることがあるだろうが、自分の力でお勤めしている気になったらアカンよ」とおっしゃいました。
声を出しているのは私だけれど、それは阿弥陀様の願いが自分に届いた現れであり、その願いに目覚められたお釈迦様、親鸞様が伝えて下さった言葉です。
そしてそれはそれぞれのお宅のご先祖様方が守り伝えて下さったものです。
きっと先に往かれた方々が諸仏となって導き見守って下さるので、こんな私でも安心してお勤めすることができるのだと思います。

当初は苦しかったマスクでのお勤めも、次第に肺活量が鍛えられたのか今では気にならなくなりました。

芽吹きの春、お浄土から見ていて下さる諸仏の笑顔を胸に明るい声でお勤めしてまいります。
【by坊守】