もう三十年近い昔になりますが、住職と結婚して初めて訪れた福岡はまさにこの季節でした。どこまでも広がる黄金色の麦畑をみて驚く私に住職は、麦が実るこの季節を「麦秋(ばくしゅう)」というのだと教えてくれました。福岡の麦畑はそれまで見たことがないくらい広くて、六月なのにそこだけ秋が広がっているような不思議な光景だった記憶があります。
当時の私が知らなかっただけで「麦秋」は初夏の季語ですし、気象や動植物の変化で暦を示す「七十二候」では五月三十一日から六月四日が「麦秋至(むぎのときいたる)」にあたるそうです。そうした言葉ができるくらい麦もお米と同じように昔から私たちの生活の伴侶だったんですね。麦も美味しいですもんね。
「麦秋」の次は「田水張る」。ここまで天候不順が続いてきました。自分本位な思いとはわかっていますが、豊かな実りがありますようにと、どうぞ良い雨、良いお天気をと願ってやみません。